『特別喫茶室』くちびるつや子の事情
香川県の陶芸家、いえアーティスト、自称芸人(人々を楽しませるという意味で芸人だそう)の及川みのる氏をご存知でしょうか。
2年ほど前、弊店2階の櫻ギャラリーで「スイキンチカモク」という展示をされたことがあります。及川さんによる女性の陶像と、その陶像のイメージを何倍にも膨らませるかのようなお知り合いの方による写真の展示で、とても素晴らしいものでした。まるで小さな美術館のようで、荘厳な雰囲気すら感じる空気感が漂い、オーナーである母は櫻ギャラリーを作って良かったと心底思ったそうです。
及川さんとはその頃からのお付き合い。弊店のギャラリーショップの什器の一部でもお世話になっています。
その及川さんからコロナウイルス感染防止の自粛期間中に、ある提案をいただきました。客席と客席の間に自身の作品である陶像を置いてみてはどうかと。そしてその陶像はくちびるつや子と名付けた不思議な生き物で。
ソーシャルディスタンスも保てるし、何よりお越しくださったお客様に楽しんでいただきたいとおっしゃるのです。
何だか面白そうなワクワクする提案に私たちも乗っかることに。
そうこうしている間に自粛期間は明け、お越しくださるお客様の人数も通常に戻りました。客席の間隔を今以上に空ける必要がなくなったため、当初の予定とレイアウトは変更することになりましたが、及川氏による期間限定(7/18~7/28)の特別喫茶室、無事開幕することができました。
店内の一角、こちらのカーテンの向こうが特別喫茶室です。
特別喫茶室でお客様をお迎えするのは「くちびるつや子」と名付けられた陶製の生き物です。なぜ、くちびるつや子なのか?それは、主に唇にだけ透明の釉薬をのせて、くちびるをつやつやにしているから。
一体一体全部違う子です。指先でちょんちょんと触ると、ゆーらゆらと揺れるように作られています。
どこかのほほんとしている表情を見ているだけでも癒されますが、このゆらゆら揺れるさまにはなおさら癒されるものがあります。
人のような、妖精のような、妖怪のような、動物のような、鳥のような、野菜のような、お花のような。そんなかわい子ちゃんたちたち。
不思議の世界、くちびるつや子の森に迷い込んだような気持ちになるとおっしゃってくださったお客様もいらっしゃいました。
隣に座っている子にとてもご縁を感じて連れて帰りたいとおっしゃってくださったお客様も。私どもが生みの親である及川さんとの橋渡しをさせていただきますね。
くちびるつや子は今年の9月、香川県の塩江美術館での展示に出るという大舞台を控えています。
お渡しはその舞台を終えてからとなります。
弊店に来たつや子さんたちは20数体ですが、塩江美術館の展示にはなんと100体のつや子さんが登場するそうです。その舞台セットも及川さんが作られるそうです。これはとても楽しいことになりそうです。
明日でつや子さんたちの集う特別喫茶室は閉幕です。
何だか寂しいなあ。
また会う日まで、くちびるつや子さん。
*弊店に集ったくちびるつや子。そのそれぞれに個性的な面々の一部をご紹介させていただきます。よろしかったらどうぞご覧くださいませ。
「あ、これ、どこかで見たことある!どこだっけ?そうそう、〇〇で見たよ。」
「私は△△で見たことあるよ。」
そんな存在になることを夢見て作り続けたいと笑う、及川みのるさんでした。