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旅するラグvol.2/2022.11月

櫻茶屋のトライバルラグ展、2022年11月、昨年に引き続き2回目の開催となりました!
本物のトライバルラグとは?
そう尋ねられると、きっとこのように答えるでしょう。
中東近隣の国々の遊牧民が商業用ではなく(販売目的ではなく)、自分たちの暮らしのために自家用に織った毛織物です、と。
トライバルラグは日本では今ちょっとしたブームになっています。
SNSでもよく目にしますし、ドラマのセットにもよく使われていますし、インテリア雑誌でもよく見かけます。
皆さまがお好きなのはどんなラグでしょうか。

私たちは、ラグを扱うこと30年以上、トライバルラグに魅せられ、トライバルラグの魅力を全国に広める活動をされているTribeの榊龍昭さんにラグを届けてもらっています。
榊さんがどれほどトライバルラグに魅せられているのか、その話を聞いているうちに、すっかりこちらもトライバルラグのとりこになってしまいました。

今回は、遊牧民バフティヤリー族の100年前(第一次世界大戦が終わった頃)の実際の移動の旅を収めたドキュメンタリー映画「GRASS」の上映会と榊さんのお話会も開催しました。

「GRASS」は英語の字幕付きのモノクロの無声映画。
流れるのはバフティヤリーに昔から伝わるオリジナルの音源。
Tribeの榊さんが、ときに研究者などから伺った情報を交えながら字幕を解説してくださり、1時間の上映時間はあっという間。
そしてその内容は現代に暮らす私たちにはとても衝撃的でした。

かつて最も過酷な移動をしていたというバフティヤリー族。
草の生い茂る大地を求め移動の旅が始まります。

何箇所か難所があるのですが、その1つ、川を渡る移動ではヤギの皮を膨らませてそれを浮輪代わりにし、イカダを作ります。
ヤギは泳げない動物なのでイカダにロープでくくりつけて対岸まで運びます。
女性や子どももイカダに乗せて。
羊とラクダは川を泳がせます。
この川がなかなかの急流なのです。
浮輪に乗った男性が動物たちを誘導しますが、なかには助けようとしても流されてしまう羊もいるのです。

かれこれ1週間かけて川を渡り、道なき岩山を登り、次は最後の難所、雪山越えです。雪山を超えると約束の地にたどり着くのですが、当時の遊牧民はなんと裸足で雪山を越えるのです。
履き物と言えばスリッパみたいなものしかないそうで、雪山はそれでは滑るので裸足なのだそうです。男達がシャベルのような道具を使って道を作り、動物も人も峠を越えて行きます。

信じられないような映像の連続。

なぜこれほどまでに過酷な移動をするのか、それは羊のためです。
大切な羊の餌である草のため。
そして彼らにとって羊が資産なのだそうです。

当時の絨毯はその自らが育てている羊の毛を紡いで染めて手織りしてできたものです。
実際にそのように遊牧生活をしていたときの羊の毛と、現代の飼育されている羊の毛ではキューティクルの数が全然違うのだそうです。
地域によって毛質に違いもあるようですが、ミネラル豊富な大地の草を喰み、移動で鍛え抜かれた羊の毛が、そうではないものと比べると違うというのはすごく当然と腑に落ちました。

本物のトライバルラグとは、そうした実際の遊牧生活のなかで、遊牧民が商業用ではなく、自分たちの暮らしを楽しみ豊かにするために織ったものです。

各部族によってそれぞれ特徴があり、一枚のラグのなかに部族の暮らしぶりが想像できるものが多く、見ていて飽きない楽しさがあります。
そうした自分なりの想像が、選んだラグをより愛着のあるものにしてくれる、そんな気がします。

何はともあれ、お気に入りのラグが家のなかにある、それはとても素敵なことだなあと思います。

来年もトライバルラグ展 vol.3開催決定。
2023年11月、また櫻ギャラリーで会いましょう!
たくさんのトライバルラグと一緒に。

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